映画夜は短し歩けよ乙女

きっかけは2010年ノイタミナで放送された「四畳半神話大系」というアニメだ。

 

深夜車で学生のころの友人の家に遊びに行き、私たちは社会人になったアレコレを楽しくおしゃべりをしていた。テレビはBGM程度につけっぱなしになっておりだれもみていなかった。

そのとき「ぼのぼの」でおなじみの汗をかくときに出る効果音がテレビから聞こえてきたのだ。思わずテレビにくぎ付けになった。でも流れているアニメには人間が出ている。「ぼのぼの」ではない。なんだこの影絵のような人物ががぐにゃぐにゃ動くカラフルなアニメはと衝撃をうけたことを今でも覚えている。そして初めてみたはずなのに謎の既視感があった。

 

映画クレヨンしんちゃんヘンダーランドの大冒険だ。

 


ヘンダーランドの大冒険 追いかけっこ

 

この追いかけっこのシーンが強烈に印象に残っている人は少なくないと思う。

 

これは面白いに決まっていると思い家に帰ってから1話から全部観た。調べるとこのクレしん映画の絵コンテを担当した湯浅政明という人物が四畳半神話大系のアニメの監督を務めていた。他にもクレしん映画ロボとーちゃんやピンポンのアニメに関わっており、絵や動きを観ただけでこれは湯浅さんが関わっているとわかるくらい個性的だった。

 

原作は小説ということを知り、原作厨の私はすぐにamazonで購入することを決め、併売として夜は短し歩けよ乙女も表示されていたので勢いで買ったのである。こうして今から7年前に今回の映画の原作に触れる機会を手に入れた。以来原作者の森見登美彦のファンになり、ほかの作品も読み、今でも楽しんでいる。

 

夜は短し歩けよ乙女のアニメ化も心から望んでいた。できれば湯浅監督でと望んでいた。望みは叶い、四畳半神話大系のスタッフと同じと知って小躍りしたくなる気持ちを抑えられずにはいられなかった。しかも主演声優は四畳半神話大系と同時期に知って好きになった星野源だった。

作中の言葉を借りるならば「こうして出逢ったのものも、何かの御縁。」と言わずにはいられない。

 

原作は4章を四季ごとにわけ、1年間を書かれていることに対し、映画は一夜で四季をめぐる構成になっていた。映画という限られた時間のなかでのこの構成はテンポの良さに拍車をかけたと思う。観ていて爽快だった。

原作で想像していた情景が映像という形で目に飛び込んでくることに感動を覚えた。偽電気ブランや火鍋を口にするシーンはあまりにアニメ的すぎるがそこがユーモラスで自分も口にしたいと心底思った。三階建て電車の登場シーンには、ああこうなっていたのかと不思議な説得力がありうっすら涙が浮かんでしまった。

アニメーションでできるすべてのことを取りこぼすことなくやってのけた傑作だと思う。

これから映画を見る人はぜひ原作を読んでからこの傑作を観てほしいと思う。