凍てつきし我が青春の日々⑮

昭和20年1月2日(火)曇時々晴

元旦も暮れてはや、二日の朝となった。今朝も雑煮であったが、固い餅が二つ入っており、寂しい限りだ。

今日からはもう平常通り、講義があった。今日も冷えて寒い。講習もあと一カ月余りとなる。何事も辛抱し、一生懸命頑張って行こう。

今日は食事当番であったが、飯の銀蠅が出来ず、上等兵の機嫌が悪い。食べ物の事で多いとか少ないとか、ブツブツ言って、全く卑しい限りだ。お里が知れる。飯を多く貰って来るものはなかなか捌ける等と言って、上等兵連中はその人間を可愛がるが、自分は何時も覗らまれてばかりである。しかしたとえどんなに思われても構わない。上等兵の機嫌をとるために、この講習に来たのでは無いのだから。毎日日記に、こんな事を書くのは自分ながら嫌になってしまう。

夕食後バスに入ったが、入浴している間だけは、自分の時間として、何事も考えずに身体が温まるまで、じっと湯に浸かっていることが出来るのが嬉しい。早くこんな不愉快な講習を終え、何処かに転勤したいものだ。

昭和20年1月3日(水)曇 元始祭

午前九時より遙拝式挙行さる。今朝まで雑煮が出た。正月も三ヶ日を過ぎれば、もう正月気分も無くなる。

今年は新年から不愉快なことが多く、心が沈みがちになる。悲しいこと、辛いことが多い。

心が暗くなってしまう。軍隊と言う集団の中だから、じつと我慢して、忍んでいるが、上等兵の機嫌を取る為に、海軍に入ったのではない。国の為に勇躍お召に応じて海軍に入ったのである。しかしたとえどんなに辛い事が起きても我慢しよう。悪い事ばかりは続かず、その内良い事も有るだろう。時期が来るまで、忍んでおこう。

楽しみにしていた今日の外出は一昨日の逃亡者のため、取り止めとなった。

初めて迎える正月に、相当期待しておったが、期待に反してつまらなく終わってしまった。今日は外出も無し。講習が終わる迄、全員外出止めであろう。

昨日は変な夢を見て、うなされて困った。しかし夢も又楽しいものだ。この時ばかりは軍隊の事は忘れてしまっている。