凍てつきし我が青春の日々⑳

昭和20年1月14日(日)曇

思い掛けもなく引率外出が許された。握り飯四つの弁当を携えて、午前九時半出発、八幡神社に於いて解散。松本一水と行動を共にし、先ず集会所ね行き菓子を買うため、長い行列の後についたが、遂に自分の番まで来ない内に売り切れてきまった。残念だ。せっかく並んだのに惜しいことをした。映画でも見ようと思ったが、二時より又菓子を売るとか、もう一度並んでみようと思い、映画館には入らず、あちらこちら歩き廻り、オリンピックで「パンランチ」を二人前食べた。入団以来初めてのパンであったので旨かった。二時前に集会所へ行って一時間ばかり並んだが、やはり売り切れとなった。仕方がないので外へ出て、暫く歩き廻ったが、集合時間も近づいたので、集会所へ引き返したところ、蜜柑を売っておったので列に並んだところ、今度はどうやら買うことが出来た。午後四時集合、事故も無く皆帰って来た。

夕食後バスに入る。余り早く入浴したので湯冷めしていけない。昨日今日と食べすぎて胃の調子が悪い。

昭和20年1月15日(月)曇

今日から団内寒稽古が始まる。六時起床、福石観音まで駆け足である。未だ明け切らない朝、佐世保駅前を走って行く。相当の寒さであるが、一生懸命なので寒さも感じない。帰って来た時にはビッショリ汗がにじみ出て、後から寒い。寒稽古が始まったら又急に寒さが加わった様だ。春を待つ気持ちで一杯だ。

昭和20年1がつ16日(火)雪

六時起床、未だ暗い。ほんの30分早く起きるのであるが、温まった吊り床から出るのが辛い。脚はんを着けて外へ出ると、雪が降っている。手が物凄く冷たい。いや寧ろ痛いと言った感じである。昨日と同じく駆け足。今日は歩調が早く、ついて行くのがやっとで、今にも落伍しそうであった。

今日は一日中雪が降ったり止んだりして、寒かった。修身の時間は「困難を克服しよう」と言うところであったが、全くそうである。下級兵として我々の立場は耐え難い程辛い。しかしこの辛さを我慢して行く事が人間修養となるのだ。困難を克服して万全を尽くさなければならない。

昭和20年1月17日(水)曇 雪 降雪

夜中に便所に起きたところ、真白く雪が積もっている。本年初めての雪景色である。

今朝は降りしきる雪の中を八幡神社まで駆け足だった。近いので割合楽であった。しかし風邪を引いているので咳が出て、呼吸が苦しいのには困る。

講義中眠くて自然と机に頭が下がる。睡魔を払いのけるのに苦労する。毎日の睡眠不足の故だろう。講習期間も愈々残り少なくなって来た。早く卒業してしまいたい。

夕食後バスに入る。入浴中が一番良い。誰にも気を使う必要も無く、全く自分一人の時間である。身体が温まっても、湯船を出るのが惜しい気がする。

今日は食卓番であったが、大体無事に終えることが出来たのでほっとした。

昭和20年1月18日(木)曇 雪

寒いのみで、記事、所感なし。相変わらず朝の駆け足は辛い。

昭和20年1月19日(金)曇 雪

近頃は水が凍っている。寒さが身にしみる。朝の駆け足は汗が出て身体が温まるが、後が濡れているので寒くなる。

寝ている時が一番良い。楽しい夢を見ておる時は幸せだが、途中で便所に起きるのは困る。講習期間も残り少なくなって来たが、卒業前には小浜温泉へ演習に行くそうだ。楽しみである。毎度のことながら夜の温習時間は苦手だ。早く寝たいものだ。