凍てつきし我が青春の日々㉓

昭和20年2月1日(木)曇後雨

正月も何時の間にか過ぎて二月となった。講習も殆ど終了し、明日の試験が終われば小浜ほうめんへ演習に行き、後は卒業するばかりである。

今朝は曇っていたが、暖かく感じた。しかしすぐその後冷えて来る。未だ冬去らず

観だ。寒くなってから久し振りに雨が降った。明日は庶務と需品の試験があるので、皆遅く迄勉強していたが、何もかも嫌になって、早く寝てしまった。

昭和20年2月2日(金)曇

昨日の雨で道がぬかるんでおり、朝別科の整列は舎内で行われた。

八時より庶務の試験が十二時過ぎまで行われたが、勉強不足のため出来はよくなかった。

午後は需品の試験があり、今日で卒業考査も全部終わってしまった。明日は野外演習だ。

昭和20年2月3日(土)

相浦方面へ野外演習に行く。昼は目的地に於いて野外烹炊の薩摩汁をすすって、元気をつける。

昭和20年2月4日(日)

明日より小浜方面へ演習に行くので、その準備をする。

昭和20年2月5日(月)

午前四時三十分起床、冷たくなった飯をかきこんで食べ、出発用意、六時過ぎの軍用列車にて諫早向かう。諫早より愛野まで冷たい風の中をトラックにて行軍。

愛野より演習開始、三時半頃小浜温泉に到着。宿舎吉田屋に入り、久し振りにて温泉に入り、ゆったりした気分になる。

夕食は茶碗で食べる。海軍の大きなアルミ食器と違い、少しづつよそって食べる茶碗の飯の味は亦格別だ。昔を思い出し懐かしい。五杯も食べたが、未だ食べ足りない様な気がする。夕食後十時まで自由外出が許され、仲間六名と一緒に近くの農家へ行き、薩摩芋を御馳走になる。針尾以来の芋であるので旨かった。未だ足りないと言うので、別の農家へ行き、無理に頼んで芋を蒸して貰ったが、腹が一杯であまり食べられなかった。九時半頃帰り、温泉に入ってから床につく。入団以来初めての「布団」であったので、非常に懐かしく、嬉しく思った。

昭和20年2月6日(火)

七時起床、疲れておったためか、昨夜はよく眠れた。二度と再び「布団」に寝ることは無いと思うと「布団」から出るのが辛かった。

朝食後八時三十分出発、小浜の郊外に於いて演習し、その後は通常行軍にて愛野へ向かい、ここよりトラックに乗って諫早へ行き、ここで一時間以上も時間があり、一時解散となり、四時過ぎの列車にて佐世保に向かい、六時半頃帰団した。

昭和20年2月10日(土)

三ヶ月の講習もやっと終わり、掌経理兵となり、主計科に転科した。兵籍番号も佐二補主第1128号に変更になった。貰えないと思い、諦めていた特技賞もどうにか左腕に付けることが出来た。一番寒い時期に講習を受けたので、殆ど不勉強に終わってしまったことは残念であった。が、どうやら卒業は出来た。今後は一生懸命頑張って、立派な掌経理兵として努力しようと思う。

午後九兵舎の階上にて壮行会が催され、心づくしの赤飯で祝った。

昭和20年2月14日(水)

佐世保警備隊給与係として我々講習員十名が派遣されることになった。