凍てつきし我が青春の日々㉒

昭和20年1月28日(日)晴

総員起こしと同時に大掃除。昨日で寒稽古も終わり、今日は日曜日だ。午前は双葉山一行の相撲興行が練兵場で行われた。元来相撲はあまり好きではなく、少しも興味もなく、見ておっても寒いばかりで、面白くなった。お陰で午食が大分遅れた。

午食後引率外出が許されて外出したが、二時ごろであったので、時間が少なく、映画を見る暇も無い。四時十五分集合となり帰った。

昭和20年1月29日(月)晴

この二三日は珍しく暖かい天気が続く。今朝の駆け足の辛かったことは話にならない。愈々卒業試験も近付いた。平常怠けていたので、特技賞は貰えないかもしれない。

昭和20年1月30日(火)晴

今朝は腹が急に痛み出して、練兵場まで走って行くのが苦しかった。一日中絶食したが、さすがに腹に力が入らず、ふらふらした。食事の飯は麦の量が多くて固く、しかもよく噛まないで大急ぎでかきこむので、すぐ腹を壊すのだろう。

明日は金銭の試験があるが、早く寝ることにする。寒いと寝るのが一番の楽しみだが、夜中に数回便所に起きるのには参る。

昭和20年1月31日(水)晴時々曇

この頃暖かい日が続くと助かる。春近しの観がするが、二月は未だ相当寒いことであろう。

早いものでもう講習に来てから三ヶ月が経過し、今日から卒業試験が始まった。午前金銭、午後珠算の試験があった。

比島上陸の敵は愈々その勢力を増大してマニラに向かいつつある。今後のじょうせいはどうなることだろうか。欧州に於いてはドイツも赤軍にベルリン30数里の地点に迫られ、東西共不利な状態である。

昨年六月入団して今日で丁度満八ヶ月が経過した。海軍に入り兵隊として成っていると言うことが、未だ夢の様に思える。ここ佐世保海兵団に来て、相当殴られもした。辛い事も多かった。が、もう三ヶ月が経ったのだ。娑婆で余りにも楽な生活をしていたので、こんなにも軍隊生活が苦しく思えるのだろうか。