とっておき

自分の中のとっておきのもの、自分の好きなジャンルごとそれぞれ存在する。

とくに小説漫画エッセイなど本にまつわるとっておきは、自分の琴線に深く深くぐっとくるものが多い。

 

エッセイのとっておき こだまさんの新刊「ずっとおしまいの地」を読む。

ある作家さんから本はあとがきから読むということを教えてもらったことを思い出し、私も今回はそれに倣ってみた。

 

フレッシュネスバーガーのことが書いてあった。

 

学生時代私はとある定食屋でバイトをしていた。大戸屋ではないその謎のチェーン店の定食屋は、フレッシュネスバーガーフランチャイズ店だった。

フレッシュネスバーガーの社員が集まる忘年会に来てほしいと当時の店長にお願いされ、

こんないい子たちが集まるバイトの中で自分が選ばれたのかと舞い上がり二つ返事でOKしたが、あとになってみんなに断られ最後に私に依頼が来たことを知った。

忘年会は渋谷で行われ、帰りの電車は終電。電車内で猛烈な尿意をもよおし、どうしても我慢できず、自分の最寄駅二つ手前で降り用を足した。その駅は店長の最寄駅でもあった。

「反対側のホームにこの駅トイレあるから」教えてくれて、店長は人ごみの中に消えていった。

当然電車はもうなく、タクシーで家まで帰ったことをよく覚えている。

 

こだまさんの本を読むと不思議と感想や、読んで思い出した自分の出来事を書いてみたくなり、それを実行してしまう不思議な力がある。

 

そして今回もたまに訪れる、目は文章を追っているはずなのに脳は自分と重なる出来事を追体験している謎現象が起こった。

ピカチュウの凧というこだまさんが飼い猫亡くしたあとの話を読んでいたときがそうだった。

一度読んだことがあるはずなのに涙も鼻水も止まらなかった。自分が一緒に住んでいた猫を亡くした時期と近かったのもあるかもしれない。

脳が全然違うことを考えていたので改めてもう一度読もうと思う。

こういう体験ができるからとっておきなんだよなと改めて思う。

 

余談だか中盤で出てくる日記の六月某日「死を包む」に共感しすぎてそうそうそうそう!!!!としか思えなかった。

私も同じ言葉を人からかけてもらい、その時は違和感を感じる程度だったがきちんと言葉にしてもらえてとても腑におちた。

本当にありがとうございます。

 

作品の構成も素晴らしかっです。

私は中盤の日記を後日談と捉えたので、スピンオフを読んでいるような気分で楽しく読みました。

 

表紙もすごくいい。

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鳥の顔面かわいすぎる。

 

 

 

冒頭で「エッセイを通して過去の自分に何度も救われている」という文章がとても素敵でした。

いつか私も過去の自分に救われたと思う日が来ればこんなに嬉しくて、自分を赦せると実感できることは他にないと思います。

そしてあとがきの最後に 令和四年八月 こだま という表記をみたときに同じ時をこうして生きているんだなと改めて実感できて嬉しかった。

なんか「推し」がいる人みたいなこと書いちゃったなあと思ってしまったけど、こだまさんはもう私の推しなんですねきっと。

 

これからもどうか健やかで書き続けてほしい、私のとっておきの作家さんがこだまさんです。