牛糞号

こだまさんの新作「縁もゆかりもあったのだ」を読んだ。

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ここだけの話ずっと「縁もゆかりもあったものだ」と思い込んでいた。

「も」が入るか入らないかでこんなに意味合いがかわってくるなんて。昔からこんな勘違いが日常茶飯事だった。

 

どのお話も面白かったけどやっぱり「ブルーシートの息吹」が一番好きだった。

引っ越しをするときにトラックを借りたお話。そのトラックが普段牛のうんこを乗せているので「牛糞号」と名付けていたことがかなり好きだった。おそらく「ぎゅうふんごう」と読むのだろうが、わたしはずっと「うしくそごう」と読んではクックックと笑っていた。

女の園の星に出てくるこの一コマはわたしの真理だ。

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これでもかこれでもかと「牛糞号」をいじりたおす軽快さと、ブルーシートの「ボハッ」でこちらが何度も吹き出してしまう。

それなのにタイヤがスリップしてしまった時の回想シーンでは泣かされてしまう。

作中の中でたくさんの角度で一番心が動かされた一話だった。

こんなに揺さぶられて最後はどうなるんだろうと思っていたら直前までうんこ祭だったとは思えない綺麗な終わり方だった。ちゃんとつながっている。

毎回書いてしまうけど本当に文章の締めくくりがいつも綺麗で、今回もいい話が読めて感謝していますと丁寧におじぎをしたい気持ちになる。

 

「猫を乗せて」では言うまでもなく号泣で、ティッシュ片手に何度も鼻を啜りながら読んだ。

死んでしまって1週間で書き上げた文章が本になってこだまさんの力になっていくことを切に願います。作中にまたたびが入った竹細工のおもちゃが登場したことも嬉しかった。

 

「ロフトと二ジョージョー」は新しい「  」の使い方を見た気がした。

「  」の使い方一つで同じ作家でもここまで違う色が見えるという発見ができて嬉しい。

 

こだまさんの新作を読むといつもTwitterよりながい文を書いてしまうな。

そういう力があるとても好きな作家さんなのでこれからもわたしは読み続ける。