凍てつきし我が青春の日々⑩

 

昭和19年12月14日(木)曇

今朝起きると珍しく晴れている。今日は暖かくなるなあと期待しておったところ、一日中どんよりとした寒い日であった。

海軍に入って何よりの楽しみは、寝ることと食べることのみになってしまい、我ながら情けない。娑婆にいる頃は一人のインテリとして自他共に認められ、自分の人格も認められておったが、軍隊に入ると、最下級者として上級者の私用までしなければならなくなった。これも自分の人格修養の一助と思い、諦めるほかない。

昭和19年12月15日(金)雨後曇

近頃は夜寝たかと思うと、すぐ朝となり、日時は経つのが非常に早く思われる。

今朝は雨が降っていた。なかなか寒い。風邪が治らないし、鼻水が出て困る。講義中は足が冷えて困る。こんな時は暖かい所へ行きたくなる。

昭和19年12月16日(土)曇時々雪(喜久子より来信)

今朝もなかなか寒い。午前は陸戦だった。雪混じりの冷たい風の中で執銃教練、指先の感覚が無くなり、冷たかった。教練開始前の銃を担いでの練兵場の駆け足には倒れそうに苦しかった。

昨日分隊士に呼ばれて、先日の被害届と仮受証を書く様に言われておったので、夜持って行った。時計と財布が戻って来るのではないかと期待する。

夜の温習後、経特講習員の一人が講習日誌に、自分の利己的感を書いておったので、それが伍長及び教員を怒らせ、その本人は相当制裁されたが、それが総員にも及び、下士官の説教後総員殴られた。この所悪いことばかり続く。こんな不愉快な日々を送る様では駄目だ。当初の熱意を最後まで持ち続けようではないか。

昭和19年12月17日(日)曇

昨夜寝るのが遅かった故か、今朝は総員起こし五分前まで目覚めなかったので、吊床を括るのに非常に慌てた。起床後直ちに大掃除、朝食、その後は休業だ。洗濯をしたが、水が冷たくてなかなか落ちない。

二時半頃総員整列が掛かる。未検閲私信の発信を面会人を通じて頼んだことが、団門に於いて露見し、その為我々総員も海軍精神注入棒と言う棒(直径五センチ位)で尻を三つ殴られた。生まれて初めてのことであったので、呼吸が出来ない程であった。

昨日今日とこの頃はどうしてこんなに種々なる事件が発生するのであろうか。未だ講習も半分終わった位だ。これから先、教官、教員に迷惑を掛けない様に自重しよう。たとえ口ではどんなに旨いことを言っても、それが実行に移せない様では何の役にも立たない。不言実行だ。熱意を以て我々は講習に臨まねばならない。講習も戦務の一端あると言うことをよく考えて、明日からもっと励んで行こう。以後講習員中から何の間違いも起こらないことを望んで止まない。