ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいを読んで

今の仕事が今月いっぱいで、それでも6日間の夏休みは使ってよいということだったので惜しみなく使わせてもらった。職場でわたしに回って来る作業が本当にないのが苦痛だったので休めるのは本当にありがたい。

仕事をしているフリをしていないと周りの目が気になってしんどいから、自分には全く関係のないマニュアルや社内の規則を読んだフリをパソコンに向かっている人を演出していた。辛かった。30を超えても上手なさぼり方がわからない。

 

夏休みがとれて自由な時間があっても、実家にかえることも出掛ける事も出来ない。

出掛けたつもりで本を買おう。いつもけちけち文庫本を買うけど今日は単行本買っちゃおと意気込んで本屋で4冊購入した。

 

そのうちの一冊が大前粟生の「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」だ。

 

f:id:namidamenoo:20200730173112j:image

やさしすぎて仲の良い相手につらいことや愚痴を言えない人達がそこにいた。

自分がつらい話をすることで相手までつらい気持にさせてしまったらどうしようという心配からだった。だからぬいぐるみにしゃべる。

繊細だ。

 

わたしもつらい話をすることで相手の気持ちを引っ張りたくない。でもぐるぐる考えていることはたくさんある。思考ダムが決壊寸前だ。決壊前に自分の気持ちを整理するためには誰かに話を聞いてもらいたい。決壊寸前だけど時間をおいておどけて話せるようになれば相手の負担は減るよな!という思考でつらいつらいの本番のときに誰かに今つらいって言えた事があったか思い出せない。不健康だし遠回りだしまどろっこしい。ばかたれ。

能天気に生きてきたつもりだったけど自分はもしかして生きづらい人間なのか?と思うようになった矢先にこの本を手に取った。

 

主人公七森がぬいぐるみのおばけちゃんに宣言した内容が刺さりすぎて胸が痛かった。

最終的には一番聞いて欲しい相手につらい気持ちを打ち明けることができるのだけど、その時も言葉を選んで話に登場する人を敵にまわさないようにする配慮がやさしくて、アンタそこまでしなくていいよと苦しい気持ちにさせられた。

 

最初から最後まで苦しい話だった。でもこのタイミングで読めてすごくよかった。

昨日ともだちにわたしも愚痴を言ったとこだったからだ。

 

 

短編集なのでいくつかほかの話もあった。

漫才師が出て来る話でネタの中に、梅干しとチャーハンが好きやから、梅干しでチャーハンを作りたい。最終的には梅干しで坂本龍一を作ったという流れに声を出して笑ってしまった。

説明のつかない笑い。本当に好きだな。